第6章 ひと夏の思い出
楽しい時間はあっという間で、間もなく閉園時間になる。
「今日はすっごく楽しかったね♪」
「雪乃の笑った顔いっぱい見れて良かった♪」
そんな他愛もない会話をしながら、最後のアトラクションに向かう。
「ベタだけど、観覧車ってやっぱ夜がいいよね~」
「え~? でも昼間も遠くまで景色見えるし、いいと思うけどな~?」
閉園間際なので、昼間程混雑しておらず、数分の待ち時間で私たちの番がやってきた。
係員が扉を開けて、二人でゆっくりと乗り込む。
入口の段差に躓いてしまった私を、先に乗り込んでいた徹が抱きしめてくれる。
「ありがと……」
係員は何事もなく「行ってらっしゃーい」なんて言うけど、私は人前であんなに密着することに慣れていないので、全身真っ赤になってしまった。