第6章 ひと夏の思い出
徹は「帰れ」と言わんばかりの顔をしていた。
「なんかゴメンね」
「いや、別にいいよ。影山は気にすんな! じゃぁな!!」
岩泉君はそう言って帰ってしまった。
「岩ちゃんめぇ……」
「徹、なに怒ってんの?」
「だって、岩ちゃんが……」
「私も徹も岩泉君に助けってもらってるんだよ? 怒るんじゃなくて感謝しなよ?」
「うぅ~……雪乃には俺の気持ちわかんないんだよ~!!」
徹がぐずってる理由は確かにわからなかった。
「ごめんね」
「私こそゴメン。ちゃんと待っててあげれなくて……」
「雪乃が居なくなって、すげぇ心配した……俺、彼氏失格だわ」
「そんなことないよ!! 徹は私の気持ちわかってくれたから岩泉君に頼んだんでしょ?」
「雪乃はなんでもお見通しだね♪」
「徹だってそうでしょ?」
私たちはお互いを見つめ合い、そして笑った。
何が可笑しいわけでも無いが、自然と笑いが出てきた。