第1章 始まりは突然に
そう言って及川君は私をギュッと抱きしめた。
私は一瞬何が起きてるのかわからなかった。
「雪乃は欲張りだなぁ、こんな事までして貰いたかったなんて!」
「…………………………」
私は何も言えなかった。
きっと、本当に望んでいたから。
欲張り過ぎる私を、貴方はどう思っていますか……?
「ねぇ、雪乃……、俺の事好き?」
及川君がそう問いかけてくる。
私は彼の腕の中で小さくうなづく。
「ホントに?」
また、うなづく。
「じゃあ、俺からのお願い……」
私を抱きしめる腕が少し弱まった。
なんだか不安になり顔を上げてみると彼は顔を赤らめながら呟いた。
「俺の事、名前で呼んで……」
一瞬、飛雄の顔が浮かんだ。
--か、可愛い//////--
お互い顔を赤くしている。
私は意を決して------
「と…………おる…………」
彼はビクッとして、でも凄く嬉しそうな顔をして私を見つめ返す。
「もっかい……呼んで?」
「////と、おる……////」
「もっかい!!」
「徹!!!!!」
私がそう叫ぶと、再び抱き締められた。
先程よりも、もっと強く……。
「く、苦しいよ……」
「あ、ごめん。つい嬉しくて……」
そう言って、今度は優しく抱き締めてくれる。
これが現実だったら、きっと私は死ぬんだろうな……なんて考えていた。
「雪乃、何考えてんの? 凄い顔してるけど……?」
「////」
「なんか変な事考えてたんでしょ〜〜?」
「ち、ちがっ!? ただ、これが現実だったら、私幸せ過ぎて死んじゃうんだろうなって。ほら、いい事あると同じ分だけ悪い事が起こるっていうでしょ?」
「じゃあ雪乃にとって、今は死ぬほどいい事って事なんだ?」
徹は悪戯っ子みたいな顔でそう問いかけてくる。
「何回死んでも足りないくらい、私にとっていい事だよ……」
どうしてだろう。
なんだか今日は素直になってしまう。
きっと、夢だから……、そうに決まってる……。