第6章 ひと夏の思い出
「ねぇ、雪乃……それ、マジ?」
わが家へ迎えに来てくれた徹は開口一番、私の服装を見てそう言った。
「だ、だから……可愛い服ないって……言ったじゃん……」
前面に大きく四字熟語の書かれた奇抜な色をしたTシャツに、黒のショーパンを履いた私を見て必死に笑いをこらえている。
「デートするような事なかったし……ファッション誌とかも全然見ないから……やっぱり制服に着替えてくる!」
玄関に向かって歩き始めた私を徹が制止する。
「ちょっと暑いかもしんないけど、これ着れば結構いいと思うよ?」
そう言って、徹は自分が着ていたネルシャツを私の肩にかける。
「でも、それじゃあ徹が……」
「俺はいいの♪ 何着ても似合っちゃうからね~♪」
程よくついた筋肉がTシャツの上からでもわかる。
女性とはまた違った色っぽさに見とれてしまう。
「そんなに見られたら穴開いちゃうよ?」
「ご、ゴメン……」
徹は私のおでこにキスをして「行こっか♪」と歩き出した。
私達の初デートが始まった。