第5章 すれ違う思い
どれくらい時間が経っただろうか。
あれだけ鳴っていた携帯も今は静かになっている。
「呆れて帰ったのかな……」
ポケットから携帯を出してみる。
たくさんの着信はやはり、すべて徹だった。
ポケットに戻そうとすると、また振動した。
今度は短いからメールだ。
――お~い? どうしたの~?――
いつもの能天気な徹。
いつも通り過ぎて、こんなに悩んでいる自分がバカバカしくなってくる。
私が返信しないでいると、しばらくしてまたメールが来た。
――屋上で、待ってるね――
心臓を鷲掴みにされたような感覚が襲う。
ここに居たら、徹に見つかってしまう。
慌てて立ち上がると、目の前がグニャリと歪んだ。
視界の隅で扉が開き、誰かが入ってきた。
多分徹だろう。
来るって言ってたしね。
そのまま、私は意識を手放した。