第5章 すれ違う思い
私はどうしていいかわからなかった。
今見た事実を受け入れることが出来なかった。
あんなに好きと言ってくれていた彼が嘘を言っているとは思えなかった。
けれど、あの姿を見たらそれもわからなくなった。
私の足は、無意識に屋上へ向かっていた。
徹に初めて告白された場所。
徹に初めてキスされた場所。
外は肌にまとわりつくような暑さだった。
もちろんそこには誰も居ない。
「徹……、私は何を信じたらいいの……?」
先ほどから何度も携帯が振動している。
きっと徹だろうけど、出る気にはなれなかった。
私はフェンスに背中を預け、その場にしゃがみ込んだ。
さっきの場面が頭から離れない。
何度も頭を振ったり、別の事を考えようとしたけれど、それらはすべて無駄な事だった。