第3章 〜sidestory〜
「及川君。私、夢の中だけでも及川君の事独り占め出来て良かった……」
そんな、終わりみたいな言い方やめてくれよ。
「俺も、雪乃の気持ちが聞けて良かった」
雪乃と目があった。
彼女は耳まで真っ赤になっている。
「雪乃顔真っ赤! タコさんみたいだぞ♪」
雪乃の顔は更に赤みを増す。
「夢なら覚めなきゃいいのに……」
「そうだね」『夢じゃない!!!』
「雪乃と、もっとこうしていたい……」
俺は彼女を抱きしめるので精いっぱいだった。
彼女は夢だと思っているから。
こんな夢みたいなこと、現実であってほしいけど、だからこそ壊してしまうのが怖いから――
「雪乃は欲張りだなぁ、こんな事までして貰いたかったなんて!」
雪乃は俺の腕の中で動かなくなった。
「(あれ……? 俺、もしかして汗臭かった……? もしかして、引かれた!???)」
雪乃が余りにも無反応なので心配になったが、しばらくして脇にあった彼女の手が俺の背中にそっとまわった。