第3章 〜sidestory〜
布団に倒れこむ音がして振り返ってみると、彼女は何事もなかったかのようにスヤスヤと眠っていた。
彼女の髪に触れてみる。
肩まで伸びた漆黒の髪は、思ったよりも柔らかかった。
「雪乃……」
そっと、名前で呼んでみる。
寝ている彼女はもちろん気付かない。
いつもより近くで見る彼女はやはり綺麗だった。
彼女は俺の気も知らずに、無防備にそこに居る。
聞こえてはいないとわかりながらも、彼女に声を掛ける。
「影山さん。俺帰るよ……」
彼女の髪に触れてみる。
「…………ぃで……」
「!?」
起こしてしまったと思い慌てて手を放す。
「ご、ゴメン、起こすつもりじゃ……?」
どうやら寝言のようで、再び規則正しい寝息が聞こえてきた。
「なんだ……、行かないでなんて……寝言でも言っちゃダメでしょ……」
彼女の髪を再び撫でる。
「そんなこと言われたら、嘘でも……離れたくないよ……」