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【HQ】夢から始まる恋

第3章 〜sidestory〜




 近くまで寄ってみると、それは彼女だった。


 真夏にも関わらず、厚手のコートにマフラー、ニット帽まで被っている。
 見ているこっちが暑苦しい。


 彼女は苦しそうな呼吸をしながらも、大事そうに保冷バックを抱きしめている。



「こんな時まで飛雄かよ……」


 俺の中を黒いものが駆け巡った。



「おい! そんなとこで何してんだ?」
「!!」


 背後から岩ちゃんの声。


「影山さん……」
「?」


 俺は倒れている彼女を抱き上げる。
 それでも彼女は大事そうに”それ”を抱きしめていた。


「え、なん?」
「倒れてた」
「いつから?」
「わかんない……」
「…………」
「…………」


 こんなにたくさん着込んでいても、彼女は驚くほど軽かった。


「熱い……」
「暑い? そりゃ、夏だから……」
「違う! 暑いじゃなくて、熱いの! 熱あるのかも……」
「とりあえず保健室……」


 ついつい取り乱してしまった俺に対し、岩ちゃんはとっても冷静に対処してくれた。


 俺が彼女を保健室まで運んでいる間に、岩ちゃんは養護の先生と飛雄を呼んできた。


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