第2章 近くて遠い距離
見上げると彼が肩を揺らしながら笑っているではないか。
「へ……?」
私は何が何だか訳がわからなかった。
「ご、ごめん……っ……、影山さん、あまりに真剣な顔してるから……ついっ……」
そう言いつつも、彼の笑いは止まらない。
私の頭は?でいっぱいだ。
「さっきのは、冗談……かな? 半分はね♪」
「え、じょ……冗談て……どこが……?」
彼はお腹を抱えながら背を向けた。
そんなに私はおかしかったのだろうか……?
「本で……読んだんだ。さっきの話……」
彼は震えながらそう答えた。
自分が多重人格者であるというのが冗談だったようだ。
単純に考えればすぐにわかる事なのに、私は彼の冗談を鵜呑みにしてしまった。