第2章 近くて遠い距離
職員室のある特別棟には、授業以外ではあまり生徒は来ない。
私は余計に彼を意識してしまう。
まるで、この世には私たち2人しかいないのではないかと錯覚してしまうほどに静寂に包まれている。
「及川君……早く、プリント出さないと……お昼逃しちゃうよ……?」
彼は私の頭に手を置いたまま動かない。
「及川君……?」
彼を見上げてみる。
なんだか悲しそうな目をしていた。
「どうしたの……?」
今にも壊れてしまいそうな彼に問うてみるが返答はない。
規則正しく上下する肩を見て、時が止まったのではという疑問を払拭した。
「耳まで真っ赤…………タコさんみたい……」
「えっ!??」
私は思わず耳を疑った。
夢の中の彼と同じことを呟いたから……。