第7章 季節の変わり目
私が放心状態でいるのを知っているかのようなタイミングでポケットの携帯が振動した。
しばらく経っても止まらないのでどうやら着信のようだ。
画面を確認すると、やはり徹からだった。
「もしもし……?」
「あ、もー! 雪乃出んの遅ーい!!」
電話越しに頬を膨らませる徹の顔が浮かんで思わず吹き出してしまう。
「何笑ってんのー?」
「ごめん、ごめん。徹の顔想像したら……つい……」
「え!? 何!? 俺の顔ってそんな笑えちゃう!?」
「あ、いや、そうじゃなくてね――」
話に花を咲かせていると、ちょうど岩泉君が戻ってきた。
「ゴメン徹、岩泉君戻ってきたから……終わったらまた連絡するね!」
「あ、ちょっと!!」
ポケットに携帯を戻し、岩泉君に「お帰り」と言うと「おぅ」と短く返事が来た。
本当に水を被ってきたのか、岩泉君の髪には所々水滴が残っていた。
「ちゃんと乾かさないと風邪ひいちゃうよ?」
「んぁ? あぁ、これくらい平気だよ、短いしすぐ乾く」
「う~ん……」
「それより、企画書書き終わったか? って、頼んだ身としては強くは言えねぇけど」
「あと少しだよ。ほらっ♪」
岩泉君は「手際がいいな」とか言いながら、先ほどから存在を主張する携帯を取り出し窓際に移動した。