第4章 〈新生活〉
「貴方って実は化け物なんじゃないですか?」
「真逆、そんなことないさ。私はふつうの人間だよ」
太宰さんはそう云いながら外套のポケットを探っている。
そして目当ての物___針が入った小さめの箱___を取り出し、満足気に笑う。
「どうぞ、暁ちゃん。
一寸可愛いのを選んでみたんだけど、どうかな?」
太宰さんの掌に乗った其れを受け取ると、遠目では判り辛いが花の模様が彫ってあるのに気が付いた。
箱の色も薄い桃色で可愛らしい。
「可愛い、です。
私の為に態々有難うございます」
「いえいえ。
喜んでくれるなら、こっちも買った甲斐があるってものだよ」
太宰さんがくれた薄桃色のそれを、外套のポケットに丁寧に仕舞った。