第1章 出会い
朝食替わりのイチゴジャムサンドをかじりながら、力の限り自転車を漕いでいく。
勢いを殺さないように角を曲がったところで彩華は暗闇に放り出された。
「っきゃああぁぁぁぁぁっ!!!」
ガクンと前輪がアスファルトから離れ不自然なまで真っ暗な丸い穴に落ちていく。
あらん限りにスピードを出していたために足で踏ん張ることも叶わず彩華は吸い込まれるように落ちていった。
その不自然な穴は彩華を吸い込んだ途端小さくなってぽんっという軽い音を立てて消えた。
それから現在に至る。
初めこそ彩華もむやみやたらに叫んでみたり、手足をばたつかせてみたりと現状に対して抵抗を試みた。
しかしそれがただ疲れるだけとの結論にたどり着いた。
思考はたどり着いても、底にはまだまだ着かないようでぼんやりと到着を待つことにした。
「落ちるだけもつかれたよ…」
ぽつりと呟いたその言葉に思わぬ返事があった。
「そうですか!それはいけませんすぐに到着させましょう!」
そのふざけたような声が聞こえたかと思った瞬間彩華の身体はぐんっと引っ張られたのを境にジェットコースターのようにぐるんぐるんと物凄い勢いで振り回され始めた。
彩華は悲鳴を上げる前に意識を手放した。
それはきっと彼女にとって不幸中の幸いであっただろう。