第1章 出会い
「あ…あの…解りません。私学校行こうとしてて…それで…」
なぜだか言葉がうまく出てこない。
女将は真剣な目で彩華を見つめている。
「急に変な穴に落っこちて…」
ゆっくり、時折つかえながら彩華は自分の解る範囲で説明する。
「…あ、後最後になんか人を馬鹿にしたようなしゃべり方の声が聞こえました。そして急に振り回されて…気を失いました」
「人を馬鹿にしたような、ねぇ…」
女将の瞳にはまだ信用しきっていない色が見える。
(──私だって信じられないよ)
彩華は信じてもらえない悲しさと知らない土地で一人ぼっちだという思いから泣きそうになる。
その時ふと女将の向こう側に人の気配を感じた。
女将から視線を外すと入口らしき扉が開いて1人の少年が入ってきた。