第1章 出会い
少女は真っ暗な闇の中を下に下に落ちて行く。
パニックも治まるくらい長い時間落ち続けているのにまだ底にはたどり着かない。
乗っていた自転車等も途中でどこかに行ってしまった。
前も後ろも上も下も真っ暗の為落下する感覚のみで落ちていると認識しているだけだ。
少女の名前は柚木彩華。
つい昨日入学式を終えてこの春から高校に通うようになったばかりだ。
女子高ということもあり、長めの黒髪と整った顔立ちに切れ長の瞳の為、中学時代からお姉様と揶揄されて呼ばれている。
性格はサバサバしていて姉御肌。
困っている人を放って置けないお人好しでもある。
成績も頑張ればそこそこ優秀、頑張らなければ平均的と羨ましい限りである。
そんな彼女の唯一の欠点は、極度の低血圧で寝起きが決して良くないこと。
目が覚めてもしばらくは立ち上がれない。
一度無理やり立ち上がって転倒してからは無理しないことにしている。
しかしそれは遅刻の大きな要因でもある。
無論本日も遅刻ギリギリに家を飛び出て自転車を高速回転させることになった。