第9章 闇夜
空の注射器をかざして海士仁は肩をすくめる。
「よく見てから誤解しろ」
「よく見てたら誤解しないな・・・」
「間抜け」
「いや、せっかちなんだろう」
「間抜け」
「・・・とも言えるか?」
「止めろよ!!!!何だよ、悪かったな!今の流れならあるだろ、誤解も!詰まんない連中だな、クソッ」
「面白いが煩い」
「わーかったから!言っとくけどソレ褒めてないからね!?」
「?勿論」
「・・・・だよね。言いたいから言ってるだけなんだろうね、アンタは。面白いって褒めてた訳じゃないんだよね?むしろくさしてた?くさしてたな?ぁあー、もうヤだヤだヤだ!これじゃ果燐の顔見てる方がずっとマシ!草もういい!草もう終り!帰ろうぜ、重吾!いや、何なら君は残れ!残って下さい!地道にボクのガラスハートにヒビ入れ続けやがって、こりゃいよいよカブトとハグだな、チクショウ!」
「カブトの恋人?」
「人外はもう黙ってろよ!」
「水月、それは天唾になりかねない・・・」
「おい重吾!いい加減にしろよ!少しはボクの肩を持てって!サスケが泣くぞ!」
「サスケが?泣く?泣くか?チームワークがなってないと泣くのか?そういうヤツだったか、アイツは」
「泣かぬ」
「ああ、そうだな!泣かないな!な訳ないよな!じゃボクが泣くぞ!」
「フ」
「フじゃないよ!もう黙れってば!てかボクが黙る!アンタらとは話さない!」
「静かでいい」
海士仁がサクッと水月の腕に針を刺した。
「だわッ!?バカッ、一声かけろよ、何考えてんだ!?あり得ないでしょ!?一瞬水になりかけたよ、マジ素で!!!!」
「煩い」
採った血を透かして見ながら素っ気なく言い捨てる海士仁に、水月はむくれ顔で溜め息を吐いた。
「で?さっきの話の続きは何なんだよ?草がヤバイ薬を扱ってるのが何だっての?」
「覚えていたか」
「覚えてるよ」
「磯辺に伝えろ」
「磯辺ってカキガラ?」
「手を出すな」
「はあ」
「目を閉じておけ」
「何もすんなって事?てか、何もしないでしょ、あのヒトは。ふらふらしてるだけで何かしそうにはないもんね」
「伝えろ」
「自分で言えば?」
「詳細は省きたい」
「・・・色々聞かれんのが面倒だって話?」
「是」
「聞かれるとまずい事でもあるのか?」