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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第9章 闇夜


「いいと思っていたのか?ならば馬鹿だな、お前」

「フン、思う訳ないじゃん?アンタのどこに感じ良さがあんのさ」

「わかってるなら言うな。どうにも馬鹿だな、お前」

「どっちみちバカかよ!?」

「水月うるさいぞ」

「どっちの味方だよ、重吾!」

「どっちかの味方するような事か?お前の話はときどきよくわからない」

「うぅわ、かーえーりーたァい。帰りたいッ!!!ここ全然面白くない!!!!・・・・・あ?」

風が吹いてカキガラが消えた。

「逃げた」

海士仁が可笑しそうに言って顔を撫でた。

「逃げたって・・・何処に行ったんだ?」

眉をひそめた重吾に、海士仁は肩をすくめる。

「さあ」

「何なの、アレ。都合悪くなるとすぐ消えてさ。幽霊かっつうの」

再び寝椅子に腰掛けて、水月が口を尖らせた。

「今のはお前がうるさくて煩わしかっただけじゃないのか?」

「・・・だけじゃないのかって、結構失礼な事言ってんのわかってる?重吾」

「そうか」

「・・・・今ならボク、カブトと握手するのも吝かじゃないな。何かアイツの言ってた事がよーくわかる」

「そうか」

「・・・・ハグもありかも知れない・・・・・」

「カブト」

フと海士仁が呟いた。

「変わりないか?」

「カブトの事?ないんじゃない?相変わらずヤなヤツだし」

「それは何より」

目をすがめて口角を上げた海士仁に、二人は訝しげな顔を向ける。

「俺も大蛇丸の世話になった」

海士仁の姿が消えた。
冷たい風がズウッと部屋を巡る。

「こういう事だ」

目を瞬かせている水月と重吾の肩に、背後から細い手がかかる。

「俺も磯辺も同じ」

振り返った二人に切り込みのような薄い口をにんまり吊り上げて見せると、海士仁は首の傷痕に手を当てて顎を上げた。

「お前らは暮れてから一仕事」

「あ、そ。やる事あったの。あの女のおもりしてりゃいいのかと思ったよ」

「フ」

海士仁は目を三日月にして水月を見やった。

「難儀な」

「あん?」

「磯辺には構うな」

「大丈夫なのか」

また眉をひそめた重吾に、海士仁は可笑しそうに頷いた。

「構うな。そこらにいる」

懐手して暗くなってきた表を眺める。

「相変わらず」

曇天が早くも宵闇を連れてくる。

「愚かな奴」





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