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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第9章 闇夜


「・・・・怖い?・・・・そう。いつの間に怖くなったんだろ・・・」

「あのさぁ、アンタがおかしな事になるとボクらが困るんだよ。大蛇丸やカブトに色々言われて来てんだからさ。何、怪我でもした?アンタ、血が止まんない体なんだろ?出血してんなら早く薬呑みなよ」

「・・・・・薬・・・」

呟いてカキガラは額に掌を当てた。

「・・・悪いんだけど、どっかいってくれないかな」

「大丈夫なのか?」

重吾が顔を曇らせ、水月が顔をしかめたとき、小部屋の重い扉が開いた。

「相も変わらず」

面白そうな低い声と共に細長い影が射す。

「見苦しい逃げ癖。愚かな」

「・・・・またアンタかよ」

水月がうんざりした顔を影に向ける。

「磯辺」

海士仁は額から手を退けて虚ろにこちらを見るカキガラへ、薄く笑って見せた。

「生きていた」

「見ての通り」

カキガラは苦い顔を俯けて膝に肘をつき、両の手で覆った。

「互いに生き汚い事だ」

「ふん?」

「草に居たんだな」

両の手の間からくぐもった声を出すカキガラに、海士仁はフッと笑った。

「探したか?」

「探したかって?・・・・いいや・・・」

「ほう?」

「・・・・探してはなかったと思う・・・多分」

「何故?懲りたか?」

手の隙から覗く顎の膏薬を見やりながら海士仁が眉根を寄せる。

「会いたくなかったから。お前にも杏可也さんにも」

「俺らから逃げるか」

海士仁の問いにカキガラは顔を覆ったまま首を振った。

「違う」

「深水師からも」

「黙れ」

「干柿からさえ」

「黙れって」

「いや、干柿からこそ」

「うるさいぞ」

カキガラが手をビュッと振った。

「・・・・あ・・・」

風が出た。

重吾と水月が思わず声を洩らす。風が海士仁目掛けて走るのがわかった。

海士仁は長く細く三つ編んだ髪を靡かせ、笑いながらこれもまた手を振る。

バヂッと派手な音がして、弾けた風が霰のように重吾や水月にも降りかかった。

「あだだッ、何だこりゃ・・・・」

剥き出しの腕を撫で擦って、水月が海士仁とカキガラを睨み付ける。

「何やってんの、アンタら!喧嘩ならよそでやれよ、迷惑!」

「ふん?悪かったな」

にやにやしながら海士仁が口ばかりの謝意を顕す。

「感じ悪ッ」





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