第9章 闇夜
「・・・・雨になりますかね」
一切空気を読んでいない鬼鮫の呟きが聞こえてきて、デイダラはハッとした。
鬼鮫は腕組みして表を眺めたまま、振り返りもしない。
「この雲では夜が早く来そうだ。・・・私たちは追い出されるんですかね」
「追い出させたりはせぬよ。わちの客であるものな」
伊草がいそいそと答えるのを鬼鮫が顧みる。
「それは有り難い。・・・・ところであなた、どなたでしたかね?」
「わちは伊草ぞえ」
「それが姓という事でよろしいんですか」
「姓は翠、翠と言うぞな」
「では翠さん。部屋に案内していただけますかね」
「いややや、伊草と呼んで欲しいなえ、もし」
「飛段。デイダラ。あなたたちはどうします。まだここで戯れていたいのなら、私は先に失礼しますよ?」
アッサリ伊草の言い分を聞き流して、鬼鮫は二人を見た。
飛段とデイダラは顔を見合わせ、鬼鮫を見、伊草を見、もう一度鬼鮫を見て首を振った。
「俺も失礼するわ。翠さん、飯まで顔出さないで頂戴ね?わかった?」
「オイラも。何かスゲェ疲れたから顔出さねえでくれよな、翠さん」
「や、止めて止めて!何で翠さん?名前を呼んでくれんかえ。でなくば部屋へ案内なぞせんぞな、もし!」
「うるせえな。いいから早く案内しろよ翠さん」
「うぅ・・・・」
「泣くなよ、翠さん。泣くとますますおっかなくなっちゃうだろ、うん?」
「こうもすげなくされていると・・・な・・・、何だか段々楽しくなって来るえ。ニフッ」
「・・・・・何っつうかこう・・・・手に負えねぇなァ、オメエってヤツは・・・・」
「ホントに偉いのか、アンタ?何か草って不思議だな。うん」
「ホントに偉いのよ、わちは」