• テキストサイズ

連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第9章 闇夜


「・・・・雨になりますかね」

一切空気を読んでいない鬼鮫の呟きが聞こえてきて、デイダラはハッとした。

鬼鮫は腕組みして表を眺めたまま、振り返りもしない。

「この雲では夜が早く来そうだ。・・・私たちは追い出されるんですかね」

「追い出させたりはせぬよ。わちの客であるものな」

伊草がいそいそと答えるのを鬼鮫が顧みる。

「それは有り難い。・・・・ところであなた、どなたでしたかね?」

「わちは伊草ぞえ」

「それが姓という事でよろしいんですか」

「姓は翠、翠と言うぞな」

「では翠さん。部屋に案内していただけますかね」

「いややや、伊草と呼んで欲しいなえ、もし」

「飛段。デイダラ。あなたたちはどうします。まだここで戯れていたいのなら、私は先に失礼しますよ?」

アッサリ伊草の言い分を聞き流して、鬼鮫は二人を見た。

飛段とデイダラは顔を見合わせ、鬼鮫を見、伊草を見、もう一度鬼鮫を見て首を振った。

「俺も失礼するわ。翠さん、飯まで顔出さないで頂戴ね?わかった?」

「オイラも。何かスゲェ疲れたから顔出さねえでくれよな、翠さん」

「や、止めて止めて!何で翠さん?名前を呼んでくれんかえ。でなくば部屋へ案内なぞせんぞな、もし!」

「うるせえな。いいから早く案内しろよ翠さん」

「うぅ・・・・」

「泣くなよ、翠さん。泣くとますますおっかなくなっちゃうだろ、うん?」

「こうもすげなくされていると・・・な・・・、何だか段々楽しくなって来るえ。ニフッ」

「・・・・・何っつうかこう・・・・手に負えねぇなァ、オメエってヤツは・・・・」

「ホントに偉いのか、アンタ?何か草って不思議だな。うん」

「ホントに偉いのよ、わちは」



/ 202ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp