第9章 闇夜
飛段とデイダラからほぼ同時に痛罵され、伊草はシュンとなった。
「・・・・ひ、ひどいわな、もし。わちの口添えがなくば揃って放り出されていたんぞえ?それなのにこうも悪し様に言われては流石のわちも立つ瀬がないわいな、もし・・・・」
半泣きの爺に言われて飛段とデイダラは決まり悪げな顔になった。
「あー・・・・確かに言い過ぎたよな。まあよ、前も言ったけどな、俺の言うことなんかそんな気にすんなって。な?悪かッたよ、正直で」
「・・・・オイラも正直なんだ。うん」
「・・・・デイダラ。ソレ謝ってねえぞ」
「・・・・よくわかんねえんだけど、オイラは今猛烈に正直でいたい気分なんだ、うん。芸術家の名に懸けて」
「・・・・オメエ、芸術家だったっけ?」
「・・・・何だとコラ、このゾンビパンダ?儀式の逆輸入かますぞ?うん?」
「訳わかんねえ事言ってジャシン様ァバカにしてっと首ごと髷ェ引っこ抜くぞ、グラ」
「殺れるもんなら殺ってみやがれ。死なねェのが自慢のテメエが木っ端微塵になっても生きてられっか、試してやっぞ、うん?」
「止めて!止めて!喧嘩はいかんぞな!」
伊草がまた慌てて二人の間に入った。
「やんちゃも大概になされ、もし。わちに苦労をかけんで欲しいえ?飛段殿もデイダラ殿もあんまりぞな・・・・そこな御仁に至ってはわちの方を見てもくれぬし・・・・・泣けて来るわいな・・・・・」
豪奢な衣装の袖を噛んで、伊草はチラリと鬼鮫を窺う。
飛段とデイダラは顔を見合わせた。
「・・・何だよ、伊草ちゃんよ、オメエ、若くて可愛い男が好きなんじゃなかったのかよ?」
「・・・ちゃんは止めろ。ちゃんは止せ。うん。オメエ意外に下手物食いか?オイラむしろ安心したぞ。鬼鮫がいいなら持ってけよ。返してくんなくてもいいからな、うん。何なら飛段も附けるぞ?」
「ううぅん。皆好きだえ?」
モジモジしながら答える伊草に、飛段とデイダラは揃って一歩下がった。
「マジ鬼鮫でもいいのか。オメエの好みはどうなってんだ?」
「だってそこな御仁は、わちより大きいてあろう?・・・ニフフ・・・・わちより大きな男子など、里にはそうそうおらんえ。新鮮だわいな、もし」
「あー、成る程なァ・・・」
「鬼鮫の独活の大木ッぷりが初めて輝いたな、うん」
「わち、独活は大好物だわいなァ・・・」