第8章 華やかな垣根の向こう
気の抜けた顔をした水月に、男は肩をすくめるように頷いた。水月は何か言いかけて男の人の悪い顔を見、口を閉じ、肩を落とした。
「・・・・どォおでもいィい~。何かスッゲェやる気失せた。あ~、どォでもいいー・・・帰りたァ~」
「サスケは居ない。俺たちだけだ」
水月に答える気配がないのを見てとった重吾が、興味深そうに男を見やりながら言った。
傷痕に見会う傷で裂けて戻らない箇所を抱えている。しかし何でだ?爽快だ。 吹っ切れてる。
「残念」
その興味の程を知ってか知らずか、先刻までとは色味の違う面白そうな目で重吾を見返して、男はフイと眉間を長い指で差した。
「ここのシワが」
にんまり笑って目を細める。
「深い奴は嫌いではない」
荒浜海士仁は首の傷に大きな手をかけて更に笑った。
「・・・・生きていた。良し」