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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第7章 飛段、孤軍奮闘


「たく、俺が突っ込みやらされるなんて、考えもしなかったぜ・・・。最悪だ」

渋い顔で言いながら、飛段は伊草の襟首を掴み上げた。

「で!?デイダラと牡蠣殻がどうしたってんだ?言ってみろグラァ」

「あッ、何たる無体な!」

「いッ、伊草様に何をなされまする!」

周りの官人達が顔色を変える。伊草は苦しげに顔を歪めながらも手を振った。

「な、何でもないわいな。戯れておるんだえ、構わんでよろし。散れ、散れ」

飛段は呆れ顔でパッと手を離して腕組みした。

「呆れた。アンタマジで偉いさんなんだな。大丈夫か、この里ァ」

「為蛍兄はわちと違うて紛うことなき貴相と王足る気骨の持ち主での、押しも押されぬ立派な君主だわいな。跡取りも幾人とおる。わちが少々とち狂っておっても、里に大儀はかからんのよえ、もし」

「あー、跡取りいんのか。良かったなあ。アンタが第一継承者じゃヒヤヒヤだもんなあ」

「なあ~、良かった良かったよえ~。お陰でわちも安心して若い男の尻を追い回せるというも・・・あぷッ」

「バカな真似してねェで、ちったァ立派な兄貴の役に立ってやれ、オメエはよ。安心してあちこちに迷惑かけてんじゃねえよ、全く」

「まあ良いではないかえ?お陰でわちは飛段殿やデイダラ殿と巡り会うたわいな。ニフフッ」

「・・・・オメエの兄ちゃんってな、スゲー苦労してんだろうなァ・・・」

「しておろうよな・・・あだだだッ、鼻、鼻を弾かれてはかなわんぞな!止しゃれや、もし!」

「だかわしい!デイダラが戻ったのか?」

「何やら大きなオマケが附いてあるが、干柿なる丈高い異相の者は飛段殿、覚えがあろうかえ?」

「何だ、アイツまで出張って来たのかよ。とち狂いやがって、余っ程だな」

「ふむ、どういった仁かいの、もし」

「あぁ、まあ、俺やデイダラと違って礼儀正しいっちゃ礼儀正しいヤツだよ?お行儀は悪かねェ」

「むう。ならば良しかの・・・デイダラ殿が、そこな仁を伴わぬ事にはわちに会ってくれんと言うておるわいよ、もし」

「ダハハ、入れてやりゃいいじゃん。アンタ、デイダラに会いてェんだろ?」

「しかし誰もかれも招き入れる訳にはいかんわいな、もし」

「じゃ、デイダラは諦めんだな」

飛段は面倒そうに言い捨てて、高居の奥を眺めやった。

「牡蠣殻は?牡蠣殻はいんのか?」



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