第6章 満月
「火がついてるわよ?」
「まだ吸いますから」
1度落とした煙草を指先で弄って、牡蠣殻は書き付けていた紙を伏せた。
「・・・・何を書いてたの?」
見咎めて目を細めた大蛇丸に首を振って、紙の上へ庇うように手を置く。
「戻ってお帰りなさい。草はどうでしたか」
牡蠣殻の問いに大蛇丸は鼻を鳴らした。
「まあまあね。いけ好かない連中だけど、趣味は悪くない。綺麗なところね、彼処は」
「草?」
カブトがフッと大蛇丸を掬い見る。大蛇丸は口角を上げた。
「手筈は整えたわ。ちゃんと目を開いて務めを果たして来なさい。ガッカリさせないで欲しいわね?」
「出来ることはします」
ポツンと答えた牡蠣殻に大蛇丸は顔をしかめる。
「・・・・張り合いないわねえ。そろそろお得意の減らず口でも叩いたらどう?」
「・・・・・・」
「まぁいいわ。カブト、水月と重吾はまだここにいるわね?」
「ええ、いることはいますが・・・」
「あの二人も草に行かせるわ。後で私のところへ連れてきなさい」
「サスケくんがあなたと話したがっていました。更に水月と重吾を使うとなると、黙っていないと思いますよ?」
「彼のところへはアタシが顔を出すから。果燐と牡蠣殻の実験はまだ?」
「今日にも行うつもりでしたが」
「昼前にすませなさい。空貝、昼餉がすんだら草へ向かうのよ。水月と重吾にはもう会ったんでしょう?」
牡蠣殻は眉根を寄せて一時考え込んだが、当たりをつけた様子で頷いた。
「あの二人と行動なさい。それなりにあてになる連中よ?それと、行き掛けにアンタの血で試してみたい事があるの。ちゃんと食事をとって一眠りしておきなさい」
もう一度頷いて吸いさしの煙草へ口をつけた牡蠣殻に、大蛇丸は釘をさす。
「出歩いたり本読んでたりするんじゃないわよ?」
「・・・・・・・」
牡蠣殻は鬱陶しげな顔をしたが、素直に三度頷いた。
「寝ます」
「寝れないだろ。薬をやるから来い」
カブトに言われて牡蠣殻は目を尖らせる。
「薬?要るか。私の出自を忘れたか」
「だったらサッサと何とかしろよ。迷惑なんだからな、こっちは」
「迷惑なんかかけて・・・・」
言いかけて牡蠣殻は口を噤んだ。険しい顔で暫し何かを考え込み、渋々口を開く。
「悪かったな」
「ああ、そうだな」