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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第2章 春の磯


「何言ってんだよ、ジャンジャン。アタシが我愛羅さんに文句なんか言うわけないだろ?文句ってェ文句は、ぜぇーんぶジャンジャン行きに決まってんじゃん。新幹線ばりに途中下車なしでお愚兄さま目掛けて一直線よ。行きて帰らぬ一方通行、いわゆる上り一本の噛ませ犬線?」

「・・・・カンクロウ。お前コイツに関わりすぎない方がいいぞ。完全にいじる気でロックオンされてるわ。逃げろ」

「・・・・オメエ、奈良じゃなくて日向か?無責任な事言うな。逃げるったってどこにどうやってよ?団子娘の気持ちが今すげェよくわかったわ。大体関わりすぎんなって完全に手遅れだっての!どういう訳だか我愛羅もテマリもこの化けがお気に入りだしよ!?噛まれ仲間だと思ってた髷は一人で逃げるしよ!」

「噛まれ仲間?」

「呆れ顔してんじゃねえぞ、奈良!髷のポストはまるっと空いてンだからな?そこにオメエがすっぽりハマッたって何の不思議もねえんだ。ザマみろじゃん、ワハハハハッ、ちくしょう!」

「・・・・おい。砂の警備隊長がぶっ壊れたぞ。やっぱりテメエは生物兵器だな?波平さん、野放しも大概にしねェと、今にマジで里を潰しますよ、コイツは」

「・・・・・・・」

取引の概要を取りまとめるために、木の葉からシカマル、砂からカンクロウを呼び寄せて話し合いの席を設けた波平だが、脱線し始めた側近藻裾を含む三人をよそに、彼は天幕の窓表を眺めて茫洋としている。

外は春。伸び伸びとした空気がそちこちに溢れ出て、長閑で充足した心持ちを引き出す。

欠けたところなどないような錯覚に捕らわれそうになる、穏やかさと健全さ。

「うん。そろそろ昼だ。藻裾。芹と野蒜を採って来なさい。お二人に昼餉を差し上げよう」

肘をついた手にのせた顎をフイと上げ、卓に広げた雑多な資料を手早く丁寧にまとめると、波平は落ち着きのない側近を促した。

「春草摘をされた事は?」

話を振られたシカマルとカンクロウは顔を見合わせる。

「趣深いものですよ?と言っても、昼飯の材料を採りに行くだけの話ですが」

束にした書類をトンと揃え、文箱に収めた波平が目尻に笑いを浮かべた。

「薬草の事を知らないと言うなら教えて差し上げましょう。芹も野蒜もまた薬草。薬効を聞きながらの摘み草も一興ですよ」

「芹と野蒜くらい知ってるって」

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