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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第6章 満月


「バカにすんな?オイラの愛読書は加古里子だぞ、うん?」

「それは安心しました。・・・いや、その歳で絵本が愛読書と言うのもどうかとは思いますが、加古里子上等。一抹の不安はこの際捨て置いて、彼の絵本を嗜好する探求心に加えて未だ人の部屋を漁って笑いの種を探し出そうとするあなたと飛段のしつこさがあれば、この任務もやり損なう事はないでしょう」

「相変わらず誉めてんだかクサしてんだかわかんねえヤツだな、うん。言っとくけど部屋漁ってんのは飛段だぞ?」

決まり悪げに薄笑いしたデイダラを鬼鮫は眉根を寄せて見返す。

「手紙なぞとっくに捨てましたよ。いくら探しても出てきません。いい加減で諦めなさい。今度無断で私の部屋に入ったら首筋を噛み千切りますよ?」

「・・・飛段に言っとくよ、うん」

「あなたも肝に命じなさい」

「オイラは廊下で見張りをしてるだけだ!」

「成る程。では飛段は首、あなたは鼻を噛み千切って差し上げましょう」

「・・・あんま変わんねえな・・・」

「そういう事です。馬鹿な真似は止しなさい。浅ましい」

言い捨てると鬼鮫は先に立って歩き出した。

「オメエ本当に来んの?後の事ァどうすんだよ?うん?」

「大の大人が雁首揃えてるんです。何とでもなるでしょう。出来なくてどうします。何のために私達のような者を集めたのですか。体制に拘らねば組織が成り立たない程度の頭と人員なら何をしたところでどのみちしくじります」

「ま、そらそうだけどよ。にしてもオメエ、そんなに牡蠣殻が気になるのか?わかんねえなあ・・・何で牡蠣殻なんだよ?」

鬼鮫が足を止めた。小走りに彼の後を追っていたデイダラは、その広い背中にぶつかってたたらを踏む。

「急に立ち止まんなよ、おい」

「芸術と称する爆発や暴発以外の事にはトンと淡白なあなたが今回は随分報酬に拘っていると聞きましたが」

「何だ、テメエまで。プライバシーの侵害だ。子供相談室に電話すっぞ、うん?」

「二十歳にもなろうという人が何を言ってるんです。バカにも休みをやりなさい。バカのオーバーワークが目に余りますよ、あなたたちは」

デイダラを見返って、鬼鮫は不思議そうな顔をする。

「イタチさんに聞きましたよ。あなた、欲しいものがあるそうですね」

「・・・・イタチが?チクショウッ、何だ、アイツそんな口軽かったか?」




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