第6章 満月
月は思ったより明るく、シカマルは急ぐ足を弛めて思わず空を見上げた。
「・・・月が明るすぎて星が見えねえ・・・」
フと波平の事を思った。
あの磯影も、また月を見て悪酔いしているだろうか。
木の葉で会ったときより、痩せて険しい顔立ちになっていた。牡蠣殻の事だけが心にかかっている訳ではないだろう。今の磯の舵取りが如何に微妙であるかは部外者であるシカマルにもわかる。
只でさえ少ない里人の数は散開によって更に減り、他里と関わる事によって今までとは違うやり方で里を運営していかなければならない必要も生じた。面倒な相手ではあったが世古たけた長老連は草に下り、頼りの姉杏可也も補佐を勤めていた牡蠣殻も去った。藻裾にしてみても、いつまでも磯にいるつもりがない事は本人が明言している。
波平が慣れぬ摂政に孤軍奮闘しているのは明らかだ。
牡蠣殻が波平の側にいてくれたら良かったと、いつか藻裾が口走ったのを思い出す。
それが腑に落ちてシカマルは苦い顔をした。
「・・・メンドくせェな・・・人の気持ちってな・・・・・」