• テキストサイズ

連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第6章 満月


藻裾は暮れた空に鮮やかに輝る満月を見返って口角を上げた。

「毒物の扱いは各里に秘伝がある筈だ。それでもおっつかねえような物騒な代物は草が一手に引き受けてきた」

「つまり?」

カンクロウの問いにシカマルが答える。

「不干渉でいた敵のテリトリーに首を突っ込む事をする羽目になるかも知れねえって話だな?」

「そこンとこは波平様の心向き任せだな。まあよ、散開して他と交わりを持つ方へ舵をきったんだ。摩擦やしがらみは当然出てくるし、甘い事言ってちゃ話になんねえ。腹をくくっちゃいるだろうと思うがよ。アンタらの大将が草との付き合いをどう匙加減するかで状況も違って来るだろうしな」

シカマルの賢しらな顔とカンクロウの敏捷い顔ををしみじみ見比べ、藻裾は肩をすくめた。

「本草が本分の磯には、絶対の禁忌がひとつある。草はそいつでよく儲ける。草と磯が兎角わかり会えねえのはそこンとこもデカい」

「絶対の禁忌?」

「ああ、まあ、そんなん、どこの里にも一個や二個あるだろ?磯もご多分に漏れずってこった」

煙に巻くような言い方をした藻裾にシカマルは顔をしかめたが、藻裾はへらへらと笑うだけだ。

「あのよ?」

口を開きかけたシカマルを遮るように、他意があるのか天然なのか、カンクロウがサクッと割って入った。

「金の在るデカい里だとァ聞いた事があるけどよ。草ってどんなんだ?磯みたようなモンか?」

その問いに藻裾は苦笑いした。

「さあな。多分違うと思うぜ?てかアタシにきくなよ。草の名は口にするのも憚られてたんだ。今だってこんな話してんのが知れたら親にぶっ飛ばされら」

「・・・・オメエにも親がいんだなぁ・・・・」

「・・・・いやいやいや、何言っちゃってんだ、バンビ丸。アタシを怒らせるとテマリあねサンにテメエの名前を語ってイタリア人もビックリのスウィートでエロエロな恋文なんか送り付けてやっぞ?あ?Mr.リビドーになりてえか、出来杉くん?」

「アホか、オメエは・・・下らねえ」

「ふぅん。面白そうじゃん。やってみろよ、汐田。テマリのヤツァ動揺して何日か使いモンにならなくなりそうだなァ・・・」

「・・・オメエはオメエで好奇心に任せて里の機能を麻痺させる気か。どうにも体がだりィと思ってたが、こんな連中と一日いりゃあ疲れて当然だ。俺ァもう帰る。波平さんによろしく言っとけ」
/ 202ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp