第6章 満月
「オメエもう帰れ。帰って我愛羅さんに迷惑かけないようにひっそりしてろ。オメエというジャンジャンはもう金輪際輝いて要らん。砂にまみれてザラザラしてろ」
「だからジャンジャンて何よ!?名詞!?動詞!?修飾語!?それともまさかの慣用句!!??」
「主語で述語で修飾語だ。マジしょーもねえジャンジャンだな!悪ィこた言わねえから初等科からやり直せ?」
「サッパリわかんねえじゃん!ジャンジャンなんて習った覚えねえぞ?」
「だから初等科行けっつってんだろ?バカじゃん?」
「・・・毒は何処にでもあるっつったな・・・・磯も毒を扱うのか?」
二人のやり取りを丸無視してシカマルが考え込みながら言った。
カンクロウの顔を行儀悪く指差して尚も何か言い募ろうとしていた藻裾が、腕を下ろして真顔になる。
「あのな、バンビ。薬を扱うんなら毒も扱えなきゃいけねえってのは本草の基本のひとつだ。もっと言やぁ、毒は薬にもなるモンが多い。そこントコは要するにさじ加減てヤツで・・・だから・・・まあ、扱うよ。磯も毒を扱う」
「そいつを木の葉や砂に卸すのか?」
「・・・・それはコレからのやりとりで決まんだろ。アタシャそこまで預かり知らない。今はここに居はするが、アタシは磯を抜けてるからな。けど、アタシの知る限り、今までの商売ン中じゃしてこなかった事じゃある」
藻裾は腰に手を当てて気持ち俯いた。
「・・・・アンタらとアタシらじゃ生き方や道理の捉え方は違って然るべきだ。磯はアンタらとはまるで違う環境で細々やって来た里だし、争い事を避けて逃げ隠れし続けてきたから権勢なんてモンにはまるきり無縁だ。よそと鍔迫り合いなんて事もしたこたねえ。薬を商って地味にやってきたヘタレの里だ」
「誰もそこまで言ってねえじゃん。いいじゃん、そういう里があったってよ。それだって磯の薬は質がいい。人の役に立つ技があんだ、胸張ってりゃいいじゃん。・・・・つうか、それと毒と何の関係があるワケ?」
「今まで磯は毒としての毒を扱う必要なんざなかった。けどな、コレからアンタらの里と連む事で多分事情が変わってくる。これがいい目に出るか悪い目に出るか、アタシにゃわからない」