第6章 満月
「何言ってんだかサッパリわかんねえ。バカじゃん?」
「バカはお愚兄さまじゃん?まぁな、アルマゲドン並みに選ばれし者のみが染まる高尚な趣味の話だからな!ジャンジャンにはわかんねえだろうな!」
「アルマゲドンったらハゲ筆頭にオヤジの群れじゃん。ますますわかんなくなったぞ」
「よし!今のはアタシの例えが悪かった!世界中の同志にごめんなさい!」
「俺に謝んじゃねえのかよ!?」
「あ?何で?」
「いや、おい、テメエらそれどこじゃねえ!ちょっとマジこの人なんとかしろって!」
思いがけない力で腕を掴む波平をふりほどけないでいたシカマルが、焦った声を上げる。
「・・・また満月だ・・・」
シカマルの目を見詰めながら、波平はポツンと溢して手を離した。
掴まれていた腕を擦りながら後ろに下がるシカマルに、苦微笑を向ける。
「悪かったね。ちょっと月に悪酔いしたな。・・・驚いたでしょう」
「驚いたってェか・・・」
シカマルは困惑しきりで思いきり眉根を寄せた。
「波平さん、アンタ大丈夫ですか」
「・・・・浮輪さんよ?」
カンクロウがまだ言いかかって来る藻裾を掌で止めて、波平をじっと見た。
「いや、もしかして違ってたら謝るけどよ・・・そいつァ牡蠣殻にゃ似てねえぞ?」
波平はなおもシカマルを見詰めて答えない。シカマルは歯を噛み合わせて更に退いた。
「え?ちょ、冗談じゃねえぞ?止めてくれ。俺はこの通り男だからな?妙な勘違いは止めてくれ。いや、マジ止めろ!断固止めてくれ!」
「・・・・・は?何?そゆ事?」
藻裾が顔をしかめてスパーンと波平の頭を張った。
「おいコラしっかりしろ、ハゲチャビン!牡蠣殻さんはまだ見つかってねんですよ?現実逃避してねえで、ちゃっちゃと働く!!!夢は寝てみろ!起きたまんま寝惚けられちゃ周りが迷惑するってンですよ!たく、何が月に悪酔いしただ。アホか!酒にも酔えねえくせにあんなモンにどうやって悪酔いすんだっつの、このポエマリンが!ホラホラホラホラ!!!!起きろ起きろ!月だか土星だか冥王星だか知らねえが、訳わかんねえモンに酔ってゲロ吐く前に仕事こなして寝ちまいなさい!」
ドカドカと背中を押しやって波平を天幕に押し込むと、藻裾はフィーと息を吐いて額を拭った。
「悪かったな、バンビー。流石にきび悪かったろ?謝るわ」