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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第6章 満月


夕刻になって、磯での話し合いは取り合えずの形が出来た。
仔細はまた後日、今度は波平が木の葉と砂に出向いてそれぞれの影と話を詰める事になっている。

「泊まって行ったらどうです。何も夜道を敢えて行く事もないでしょう?」

波平がどこか名残惜しげに言うのに、シカマルは苦笑して頭を振った。

「そう言ってくれんのは有り難いスけど、俺もこれで暇じゃないんで」

傍らでカンクロウも頷く。

二人とも独活や漉油、屈、四緒手などの野草が詰まった手土産の風呂敷を肩に襷にかけている。

「今日は月が明るいから、反って道も捗んじゃん?」

カンクロウの言葉に波平が空を見上げた。成る程夕間暮れの空の端に、丸い月の姿が見える。

「・・・満月か・・・」

呟いた波平の瞳が茫洋と霞んだ。

「追い剥ぎにやられんじゃねえぞ、お愚兄さま」

波平の傍らにいた藻裾が真顔で言う。言われたカンクロウはカチンと額に筋を浮かべた。

「・・・・何で仮にも砂の警備隊長やってる俺が追い剥ぎなんかにやられなくちゃなんねんだよ?いい加減ブッ飛ばすぞ、オメエ」

「ん?やんのかコラですヨ?思いっきり返り討ちにしてやらァでございましてヨ?」

「何だ、その話し方?」

「あら、折角丁寧に話してんのに、何だその態度はコノヤロウですねぇ。バッカヤローでございますゥ」

「・・・・何かすげぇイラッとくんじゃん・・・おい、この時期毒のある活きのいい野草を教えやがれ?」

「あン?毒草ならあちこちそこらじゅうに生えてるぞ?自分で食って探せ。セルフサービスだ」

「オメエは俺を毒に当てる気か!」

「オメエがアタシを当てる気だったろ、今!」

「・・・・鳥兜に毒芹、狐の牡丹、走野老、鈴蘭に水仙・・・・・毒はそこらに、いくらでもある・・・・・」

言いながら波平がシカマルの方に一歩踏み出した。
不意の事にシカマルは目を瞬かせてつい、後ろに下がった。

「・・・・・・・・・」

目を丸くする藻裾とカンクロウの前で、波平が手を伸ばしてシカマルの腕をとる。

「な・・・ちょ、波平さん?」

掴まれた腕を引いたシカマルの顔を波平はじっと見詰めた。

「ちょっとちょっと波平様?どしたんです?止めなよ、アンタとバンビじゃ萌えねェよ?」

「バカか、オメエは!何の話じゃん!?」

「深淵な趣味の話だろ?」




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