第5章 草という里
「探してるのは私じゃないでしょう。見え透いた物言いなどして全く様が悪い。人にとやかく言ってないで人形弄ってりゃいんですよ、あなたは」
鬼鮫は冷笑を浮かべて腕組みを解き、卓をトンと指先で叩いた。
「でなけりゃ砂に戻って身内孝行でもしたらどうです。あなたにそっくりな口の悪い老婆を見かけましたが・・・・」
「そっくり!?何言ってんだ、この野郎!何処がどうそっくりなんだよ!?耄碌したかよ、鬼鮫」
「・・・・・・いや、言われてみると、確かに何十年かするとあんな感じになりそうだな、サソリは」
「・・・・・!!!ふッ、ふざけんな、クソジジイ!冗談は止めろ!オメエら俺に呪いでもかけるつもりか!?」
「落ち着け。お前はもう年をとらないだろう?そんなにも嫌なのならば、傀儡になっておいて良かったな、サソリ」
「先見の妙と言うヤツだな。こいつにそこまでの考えがあったとも思えないが」
「この人の傀儡化はナルシストの発露でしょう。いや、幼児性の顕在ですかね?」
「・・・何かお前らと話してると殺伐として来るな。我ながら信じられねえが飛段とデイダラが優しい連中に思えてくるわ・・・」
「こんな暁でも一応バランスってものがあるんですねえ」
もう一度、トンと指で卓を鳴らして、鬼鮫は角都に視線を定めた。
「飛段とデイダラを草にやってどうなります?あの連中、薬漬けにされますよ」
「そこまでバカじゃないだろう」
「草に行っても意味はない。・・・アレが草に居ようとは思えませんよ」
鬼鮫の独り言めいた言葉に角都は薄く笑った。
「牡蠣殻は磯を離れて独り歩きする事が度々あったらしいな?何故浮輪もお前もそこを失念する?」
「どういう事です」
「草には牡蠣殻の知己がいる。牡蠣殻がそれを訪れないとは言えまい」
鬼鮫が片眉だけ器用に上げて角都を見た。
フイと帳簿に目を落とし、角都はその視線が含む問いを躱した。
「まして師匠殺しの間男が草に囲われていたとあれば、それを仇と心得る牡蠣殻はどうするだろうな。牡蠣殻の足取りを得るのに大蛇丸を探すのと同等、あのビンゴブッカーの行方は重要だ。どうしても草が浮かび上がる」
「草にアレの知己がいる?間違いないんですか」
敢えて尋ねた鬼鮫に、角都は険しい顔で手を差し出した。
「・・・・・・何です、これは。へし折って欲しいんですか?」