第5章 草という里
「牡蠣殻と消えてからこっち、大蛇丸が音に居ないのは明らかだ。あの里はあれで人の出入りが少なくない。好んで音などと接触を持つような胡乱な者は持っていきようでは存外口が軽い。蛇の道は蛇、それが根拠だ」
「お前も蛇か」
「否定はすまい。お前ですら違うとは言い切れない筈だ」
「・・・・そうか・・・」
イタチは殻に閉じ籠るような顔付きで、肯定も否定もせず、ただ頷いた。
「先に言っとくが俺ァ蛇じゃねえぞ?一緒にすんなよ?」
サソリが面白くもなさそうな様子で先手を打った。
「オメエも蛇じゃねえなあ」
一転またも嬲るような響きの隠った楽しげな声を出したサソリに、角都とイタチの目が走る。
大きな人影が卓を覆うように椅子にかけた。
「オメエは鮫だからな。蛇にゃなりようがねえ。まあ鮫も蛇も大して変わりゃしねェがよ」
サソリが目を細めて人影を見やる。
「何の話です」
大して興味もなさげな顔で、鬼鮫が煩わしげに眉をしかめた。
「蛇がどうしたっていうんです?いつからあなた達は大蛇丸の仲間になったんですか」
「・・・・・何かメンドくせェな。今突っ込みがいねんだからよ?突っ込み待ちみてェなやさぐれ方は止めろよ」
「先に面倒なヤツを突ついたのはお前だろう、サソリ。責任持って相手しろ」
「俺ァ責任をとらねえヤツは嫌いだが、自分で責任とんのァもっと嫌ェなんだよ。無理難題は止せ」
「・・・・無理難題か・・・・そこまで嫌か、責任をとるのが・・・」
「人形弄ってる分には何の責任も生じませんからね。まあ、サソリは自分らしく生きてますよ、バカなりに」
真顔の鬼鮫にサソリは肩をすくめた。
「絡むなよ。俺ァテメエの喧嘩なんざ買わねえからな。メンドくせェ」
「私にも喧嘩を売る相手を選ぶ権利がありますよ。誰が好き好んで人一倍面倒な相手に絡みますか。自意識が過剰なのも大概にして欲しいものですねえ・・・」
「・・・オメエいよいよ喧嘩売ってんな?」
「しつこい。私はあなたに喧嘩など売りませんよ」
長い手足をそれぞれ組んで、威圧的に顎を上げた鬼鮫にサソリはフッと笑った。
「あぁ、そうだったな。オメエが喧嘩売りてェのは俺じゃなくあのバカだったな。見つかったのか、牡蠣殻は?」