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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第4章 成り損ないの蛇とカキガラ


木の根元でまたも本を読む女を見つけたのは重吾だった。
煙草を手にしているが、火は点けていない。

理由はすぐにわかった。

栗鼠が居る。

時折紙を繰る以外微動だにしない女は、栗鼠の警戒心を煽る事すらなくただそこに居た。

矢張り目が悪いのだろう。時折目線だけで栗鼠の動きを追うときも、眉間の皺は消えない。

それでも穏やかだ。荷を下ろし安堵して、初めて辺りを見回したような脱力感と安逸さが窺えて、重吾は首を捻った。

何から逃げて来たんだ?

そう思った。何故だろう。

眺めているうちに足が動いた。女の傍らに歩み寄り、腰を下ろす。

栗鼠の数が増えて鳥が集まった。

女は本から目を上げない。

傷付いている。痛かったんだな。今も痛いのか?

傍らに腰掛けたまま、重吾は黙って隣の女の気配を受け止めた。

鳥が鳴いて栗鼠が走る。

それ以上の何事もなく、二人は木の根元に居た。






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