第4章 成り損ないの蛇とカキガラ
「牡蠣殻と呼べばいいよ」
引き戸が開いてカブトが姿を見せた。
ドア枠の上に手をかけて、面白そうに全員を見回す。
「暇そうだね?ピクニックの計画が潰れちゃって文句タラタラってとこかな?」
サスケの眉根がぎゅっと寄った。
「大蛇丸は何処だ?」
「大蛇丸様?会いたいのかい?死んだとばかり思ってたのに、生きててくれたのがそんなに嬉しかった?」
横をすり抜けて立ち去ろうとした女の腕を掴んで、カブトは可笑しそうに口角を上げた。
「まあ落ち着きなよ。語らって蛇なんて大蛇丸様を偲ぶようなグループを立ち上げようとしてたご褒美はちゃんと出るからさ。留守が長かったお陰で大蛇丸様は今ちょっと忙しいんだ。会いたくても今は我慢だね。大人しく待ってなよ」
「お前には何も聞いてない」
「いや、聞いてるし。ホント思春期真っ只中だな、君は。兎に角大蛇丸様に直接話がしたいんだね。サスケくん、それは難しいって今が今説明したばかりじゃないか。相変わらず聞き分けがないね、君は」
サスケから目を反らさず、カブトはまた足を踏み出しかけた女の腕をぐいと引いた。
「牡蠣殻、ちゃんと挨拶しなきゃ駄目だ。このコらとはこれから度々顔を会わせる事になるからね。ちゃんと顔を覚えておけよ?」
言われてサスケらを見回した女は、カブトの腕に手をかけてそれをフイと外した。
カブトは顔をしかめて外された腕をさすった。
。
「止めろよ、いちいちツボ突くのは。不愉快だ」
「無闇に触れるなと言った」
カブトを見返して女が口を開いた。
「失念したか?」
「・・・木で鼻を括ったような話し方は止めろよ?誰かを思い出す。・・・わかるだろ?誰だか言って欲しいか?」
「好きにしろ」
素っ気なく言うと女は意味ありげに笑うカブトをしばしじっと見詰め、答える風がないと判断したのかスルリと部屋を出て行った。
「・・・・何なの、アレ?」
水月が呆れたようにカブトを見た。
「えっらそうに。ムカつくんだよね、無視されるのって。河童呼ばわりされるのと同じくらいムカつく」
「彼女は君たちと同じ被験体だ。自分でも言ってたけど、あまり触らない方がいい。殊に傷があるようなときは寄らないに限る。気を付けるんだね」
トンと右顎を指で突いて、カブトはまた口角を上げた。