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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第20章 杏可也、そして牡蠣殻。



柔らかく遠回しに輪を狭めて、考え出すと深みに嵌らずに居られないあの牡蠣殻が波平を見ざろう得ない羽目に追い込む。
逃げられないだろう。
牡蠣殻は波平に恩を感じている。人の縁に薄い牡蠣殻は恩の返し方を知らない。極端に自分を追い立てようとする。
思う壺だ。
上手くいくと思った。呆気なくて味気無く感じる程。

あの暁の忌々しい鮫さえ現れなければ。

大蛇丸など比較にならぬ程にあの鮫が邪魔だ。恩や礼を別に牡蠣殻の気持ちを動かし、確たる理由もなく牡蠣殻へ固執する厄介な男。

先を見越して謀するのは杏可也の得意だ。
行く筋もの道を支度して、その都度選んで戻って迷路を解くように企みを行く。
立ち回りの末に天秤が思う方に傾ぐのを見るのは愉しい事。それも天秤が揺らぐからこその愉しみ。

干柿が現れた事で天秤が振れたのは腹立たしいが、取り返しはつく。波平の勇み足が次案である外道薬餌の手をも困難にしても、杏可也には更に次の企みがある。

草が手中に治まれば訳もない事。

牡蠣殻をビンゴブックに載せ、草の有り余る財源を使って賞金稼ぎ共に生け捕らせればいい。

逃げ功者とは言え、数多いる連中の網の目を掻い潜り続けるのは難しい筈。増して人慣れせず世間知らずの牡蠣殻の事、再び相見えるのは決して遠い先の話にはならないだろう。

何ならビンゴブックとは別に暁へ依頼するのも悪くない。

この手を払ったあの男の顔が歪む様が見たい。
さぞ溜飲が下がるだろう。

仲間を向こうに回してまで牡蠣殻の為に立ち回るだけの覚悟があるかどうか、是非見せて貰おうではないか。



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