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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第20章 杏可也、そして牡蠣殻。


「香燐さんを大事に。先四ヶ月は怪我をさせないよう気配りしてあげて下さい」

苦笑いの牡蠣殻の言葉に重吾が頷き、水月は渋い顔をした。瞬間、生温かい風と共に二人は消えた。

「ほわあぁあッ」

伊草が頓狂な声を上げる。

「···ふ···」

詰めていた息を漏らすような声を上げて、牡蠣殻が額の汗を拭った。

「···もしかして他人だけ失せさせるのは一緒に失せるより負担が大きいんじゃないですか?」

汗をかく牡蠣殻はあまり見た事がない。第一他人だけ飛ばすのを初めて見た。こんな事も出来るのか。

鬼鮫の問いに牡蠣殻は否定とも肯定ともとれる曖昧さで頭を揺らすと、目を丸くしている伊草に顔を向けた。

「貴方と一緒なら無理なく室に入れますね。行きましょう」

らしくもなく我から伊草の腕をとって、鬼鮫を振り返る。

「来られるんですか」

見返して鬼鮫は口角を上げた。

当然。

「行きますよ」












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