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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第20章 杏可也、そして牡蠣殻。


くくと笑って水月が背中の断刀に手をかけた。

「止めなさい。どうでもやるならまとめて表に飛ばしますよ」

牡蠣殻が二人の間に割って入る。

「磯辺!いや、干柿殿の陰に入って気付かなんだ。やれ助かった」

伊草が鬼鮫から手を離して牡蠣殻に抱き付いた。

「為蛍と芙蓉がえらい事になって。一緒に来てくれんかの、もし」

「その為にも来たのです。是非お力添えさせて下さい」

井草の背中を叩いて宥め、その逞しい肩越しに牡蠣殻は水月と重吾を見た。

「外壁の表に大蛇丸さんとサスケさんが来ています。貴方達はそっちに合流して下さい」

「合流して下さいったって、このゴタゴタん中簡単に出してなんか貰える訳?」

水月が不貞腐れたように言うと、牡蠣殻は事も無げに頷いた。

「私が飛ばします」

「お前はどうするんだ」

重吾の問いに牡蠣殻は口早に答える。

「井草さんと行きます。大蛇丸さんのところには磯の者が二人と砂の人がひとり、もしかしたら争っているかも知れませんが、上手く治めてくれたらば有り難い」

「メンドくさそうな事簡単に言うなあ。磯も砂も殺しちゃっていい?上手く治めるってそれでよくない?」

「よくありませんよ。重吾さん、お願いします」

振られて重吾が目を上げる。

「どうすればいい?」

「磯の眼鏡には必ず会いに行くと、そう伝えて下さい。大蛇丸さんには、牡蠣殻は今から頼まれ事を果たしに行くからここは退いてくれと。磯と砂に手を出したら頼まれ事は霧散する旨、間違いなく解って頂きたいのです」

「わかった」

重吾は少し間を置いて頷いた。

「それと砂の化粧顔の人に」

頷き返して牡蠣殻は、困ったような顔で思案しながら続けた。

鬼鮫が眉を上げる。

「ありがとうと、言って欲しいのです。これは私の事なので必ずしもお願い出来たものではないのですが···」

「アンタ、ボクらのとこにゃ戻って来ない訳?」

ふと水月が訊いた。
牡蠣殻は眉根を寄せて首を捻る。

「···」

「戻りませんよ。いいから早く行きなさい」

口を開きかけた牡蠣殻を遮って鬼鮫が前に出た。

「何でアンタが仕切るのさ?」

「それだけの理由があるんですよ、この人に対しては」

「はぁ?」

「いや、詳しい話は機会があればのまた後程。頼み事、くれぐれもよろしくお願いしましたよ」

牡蠣殻が目をすがめた。

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