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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第20章 杏可也、そして牡蠣殻。


「汐田!コイツを!」

カンクロウが抱きかかえた牡蠣殻を心持ち前に差し上げて声を上げる。藻裾は目尻に力んだシワをよせ、サスケから視線を外してカンクロウと牡蠣殻を見た。

そこで牡蠣殻と、目が合った。

波平が大蛇丸に斬りかかる気配、佇んで無関心気なサスケ、柳の目で笑う久方振りの牡蠣殻磯辺。

状況に気を取られるカンクロウの腕の中で、誰にも気取られぬようそっと手を上げて、口に人差し指を立てている。
藻裾にだけ、笑ってみせている。

膏薬や包帯に身を固めているが、目に濁りはない。何より生きている。笑ってる。

やっぱり生きていた。

しぶといもの、この人。

藻裾はふと笑った。

ないしょ、ないしょだ。わかったよ。

目顔で頷いて、そっと牡蠣殻から目を反らす。

生温かい風が吹いた。

波平がハッと振り返る。

「磯辺⁉」

カンクロウが、唖然として両腕を見下ろした。
何もない。己の頭巾の裾が、生温かい風に揺れるのみ。

牡蠣殻は、消えた。













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