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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第20章 杏可也、そして牡蠣殻。


地味な色合いの塊が体当たりする様に現れて、折角立ち上がったカンクロウはその塊を抱えて尻餅をついた。

「何なんだ、何なんだ⁉ピンポイントで俺ばっかりじゃん⁉ふざけんな!こんだ誰だ···」

牡蠣殻だ。

「···あぁ、アンタか···」

カンクロウは気抜けた声を出して、腕の中で目を閉じている牡蠣殻をホッとした様に見下ろした。

「···あら。おかしな組み合わせねえ」

スイと大蛇丸が目を細めた。瞳孔が収縮して瞳が針のようになっている。

見咎めた藻裾が大蛇丸の前に出た。

「そんな目するモンじゃねえですよ?物騒ったらありゃしねえ」

大蛇丸が藻裾にその目を向ける。

「···そんな目?アタシの目はこんな目よ?アタシは蛇だもの。···怖いの?」

蛇の目に睨まれた藻裾は、僅かに怯んだように足をジリとにじった。カンクロウが驚いて藻裾を見る。

カンクロウは知らない。砂の地下、藻裾の正に目の前で牡蠣殻が大蛇丸に呑まれた事を。

一方サスケは腕組みして、見合う二人を顧みもせず佇んでいる。視線は左、大蛇丸の斜め向かい、小さな木枯しが青草を微かに巻き上げる箇所。

「また来るぞ」

呟いた刹那白刃が閃いて大蛇丸が大きく飛び下がった。

「···忙しい事」

大蛇丸の笑み含んだ声を受けて、トンビを翻し細身の長刀を下げた波平が笑う。涼しい風が再び辺りを払った。

「忙しいのはお嫌いか?ならば大人しく巣穴に籠って居れば良いものを、亀ならぬ蛇が出張りなさるな!」

「磯の雛鳥が言うじゃない。出来た二代目に呑まれて長く影も名乗れなかった腰抜けが、随分立派な口を叩くわね?」

「その通り。私は相変わらぬ腰抜けだ。退け、藻裾!」

薄笑いの大蛇丸に口も裂けよと凄みのある顔で笑い返した波平が、疾く跳び出る。

半ば二人に挟まるように立ち竦んでいた藻裾がハッと身を引いてサスケにぶつかった。
サスケは舌打ちして藻裾を押し返す。

「口ばかりで使えない女だな」

カッと藻裾の顔に血が昇った。

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