第20章 杏可也、そして牡蠣殻。
「ハ。構ってちゃんか···だせぇな」
「何とでも言えよ。構って欲しい相手がいて何が悪ィよ?」
藻裾はフンと胸を張ってサスケを見た。
「···ん?」
何か言いかけたサスケを大蛇丸が手で制した。
「···おっとっと、だな」
藻裾が眉をしかめたサスケの腕をぐいと引く。
そこに涼やかな風が吹いてカンクロウがドサッと現れた。
「ふが···ッ」
「···あーあー、大丈夫か?顔から落ちてくりゃ世話ァねえやな。ん?な?難しいだろ?現れんのは。人の上にも落ちたくなんだろ?」
顔を押さえて呻くカンクロウの側に、藻裾が屈み込む。
カンクロウは赤く擦り剥けた鼻を摘んで藻裾を睨み付けた。
「何なんだ一体!痛いじゃねえかよ⁉」
「いーやいやいや、知らねえよ?アタシの仕業じゃねえからね?やろうったってアタシにゃ出来ねえもの。誰に飛ばされた?海士仁か?波平様か?牡蠣殻さんか?」
「オメェんとこのハゲチャビンだッ!!」
「波平様かぁ。怒らせたのか?しょーもねえ」
「怒らせたのは俺じゃねえよ。暁の鮫野郎だ」
「···何だよ、結局来たのかよ」
藻裾は眉をしかめて立ち上がった。
「鬼鮫が来てるの?ふぅん···」
大蛇丸が口角を上げた。
「そりゃ困ったわね。牡蠣殻がトチ狂わなきゃいいけど?」
「水月と重悟もまだ中にいる。まとめて連れて帰ればいい話だ。その後はお前とカブトでどうにでも出来るだろう」
サスケが面白くもなさそうにカンクロウと藻裾を見比べて、袖に手を潜らせた。
「まぁね。···あのコの働き次第では試したい事もあるし?」
草の壁を眺めて、大蛇丸は薄く笑った。
「アイツァ俺が砂に連れて行く。ーうちの隠居が待ってんだ」
カンクロウが膝を払って腕を組んだ。藻裾がまた眉をひそめ、大蛇丸は鼻を鳴らした。
「···フン?コソコソ書いてた手紙の相手は砂の隠居だったのかしら?少し好き勝手にさせ過ぎたみたいね」
「······」
藻裾はぐるりと全員の顔を眺め渡して目を細めた。眉根に深いシワを寄せ、考え込むように口辺を下げる。
その様子に気付いたカンクロウが、藻裾に声をかけようとした時、また風が吹いた。
「あがッ!」