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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第20章 杏可也、そして牡蠣殻。


「フン?身の上話?言っとくけどぜーんぜん興味ないわよ」

「何かあんのかって聞いたのはアンタでしょうよ。しっかりしなよ、おばおじいちゃん」

「···どうしてもアタシの食道を通りたいらしいわね?」

「そんなに通って欲しいってんなら通ってやんねえでもねえですよ?」

「上から目線で呑めって言われたのは初めてねえ。だからって楽しくも嬉しくもないけど」

「さあ、そう言われてもそんな経験ねえからわかんねえなぁ···まず人呑まないからね、アタシは」

「···で?不失者が何だっての?」

「興味なくもねんじゃねえですか。全く年寄りが意地張っちゃ体に毒だよ?ったって、まあ別に。牡蠣殻さんがアタシに失せ方を教えてくれたってだけの話。アタシにゃデカい事だが、傍にゃ大したこっちゃねえでしょう」

藻裾の答えに大蛇丸はスッと目を細めた。

「教えたり教わったり出来るモンなの?」

「さあ。聞いた事はねえですよ。皆自然に出来るようになるモンですからね。教わる必要も教える必要もありません。出来ないヤツァただ不失になるだけの話でね」

「それを牡蠣殻が、アンタに教えた?」

「出来ねえアタシが牡蠣殻さんにとやかく言われながら引っ張り回されてるうちに出来るようになった。コレ、教えたって事になりませんかね?」

「···ふぅん?たまたま能力の発現する時期と重なったって事はないの?」

「失せ始めるのが大体三歳から六歳ってのが定石、アタシが失せるようになったのは、牡蠣殻さんと会って数えて三年目の十三のとき。まあ、必ずしもそうじゃないとは言えねえが、可能性としちゃ低いでしょうよ」

藻裾は遠い目で肩をすくめた。

「あの三年以来、牡蠣殻さんはどっかよそよそしいまんまだ。あのときみてぇに構っちゃくんねえ。訳わかんねえ人だよ、ホントに」

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