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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第20章 杏可也、そして牡蠣殻。


「面白いデスねえ〜、アンタら」

「・・・ふざけた磯の人間に言われたくないわね。大体アンタいつまでここにいるの?さっさとどっか行きなさいよ」

「いやぁ、アンタらにくっついてりゃ楽に中へ入れるかと思ってね。アタシャ失せる事に関しちゃてんでポンコツで、木の葉じゃ綱手様の真ん前に湧いて出たりしちまってるしさ。ソイツを草でやっちゃ流石にマズイでしょ?」

ケタケタと笑う藻裾に大蛇丸は剣呑に目を細めた。

「何でアンタをくっ付けて草に入んなきゃないのよ。そんな事してアタシに何のメリットがあるわけ?アタシ、バカとムダが大嫌いなのよね」

「はあ。そりゃ気が合いそうだ。アタシもバカとムダは好きじゃない。まぁモノにもよりますけどサ」

藻裾は大蛇丸から目を反らして、またも草の外壁を見上げた。

「アタシが何の役に立ちゃ中に連れてって貰えます?アンタどうせ、何かの伝手があんでしょ?悠長に構えてるって事ァそういうこってしょうよ。アタシはどうでもこン中で多分間抜け面して周りに振り回されてるバカを引っ張り出したい。そん為なら少々の無理は厭いませんよ?」

「バカは嫌いなんじゃないの?」

「モノによるって言ったでしょ?」

藻裾はサスケと大蛇丸をチラッと見て笑った。

「···何故俺を見て笑う」

「んにゃ、バカなコ程可愛いってのもあんだろなって思って」

「···どういう意味だ?」

「さあ?」

「···アンタの言うバカってのは牡蠣殻の事でしょ?磯に連れ帰ろうっての?何の為に?牡蠣殻は磯に帰りたがっちゃいないわよ?」

「さあ、そこらへんはアタシにゃよくわかんねえ。大体あの人、基本的に何考えてるかよくわかんねえから」

藻裾はふむと鼻で息をついて腕を組み直した。

「アタシはただ、あの人に好きにしてて欲しいんですよ。それが良い事だって悪い事だって構やしねえ。牡蠣殻さんのしてえ事ならそれで」

「随分入れ込んでるのね。それだけの何があるわけ、あの空貝に?」

「不失ってのを知ってますかね?」

「···知らないでもないわよ。磯じゃ不具扱いよね。面白い里だ事」

「当人や身内にとっちゃ面白くも何ともねえ。失せて移動するのが当たり前の磯じゃ不失はお荷物以外の何者でもねえんですよ」

「でしょうね」

「アタシは牡蠣殻さんがいなきゃ、多分不失者だった」
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