第14章 引き際の線引き
「知んねえぞ?草に波平様とジャンジャンが向かった。ジャンジャンが何をしてえんだかはアタシャ知らねえけど、波平様は牡蠣殻さんを取っ捕まえる気でいる」
「ああ、物好きだよな、うん。ハハハ」
「ハハハじゃねえよ。磯は逃げ隠れの里だ。その気になりゃ誰にも易々とは捕まんねえ」
「だろうな。けどそれが何だ?俺にゃ関係ねえよ、うん」
「関係なかねえよ。アニさんを呼べ」
「ざけんなよ?オイラテメエの使いッパじゃねえぞ、うん?」
「折角拾った火中の栗をおめおめとまた火ン中ブッ込みやがって間抜けヤロウ!草はやべえんだよ、阿杏也さんがいる」
「あぁ、知ってらぁ。見かけたぜ」
「いるだろうとは思ってたが間違ってなけりゃ居方がやべえ。あらきっと腹に一物ある・・・」
「ふん?」
あの時の阿杏也。
左右を伺いながら、足早に後宮へ去った阿杏也。
デイダラは薄笑いで藻裾を見た。
「それが何だ?やっぱりオイラにゃ関係ねェこった」
「本気で言ってんのか?見損なわせんな」
不意に藻裾が真顔になった。
「テメエはチビで間抜けで火薬バカのエセ芸術家だけど、背中を預けられる男だろ。アタシが一遍信用したヤツは絶対下らねえヤツじゃねえ筈だ。アタシはアタシを信じてる」
「はぁ?・・・バカ言ってんじゃねえぞ!?うん!?そんなんオイラの知ったこっちゃねんだよ!?オメエがオメエを信じてるから何だってんだ?そしたらオイラもオメエが信じてるオイラでなきゃねえってか?バッカじゃねえの?あり得ねえぞ?おいコラ鬼鮫ええェエ!!!!」
鬼鮫が顔を上げた。あからさまに厭な顔をしているが、二の句もなくじっと眺めてやると舌打ちせんばかりの様子でこちらに向かって歩き出す。
「で!?この上オイラに何ィしろってんだ、テメエは!?うん!?」
ついでに飛段までやって来るのに顔をしかめ、デイダラは藻裾を睨み付けた。
「粘土を飛ばせよ。草へ行く」
涼しい顔で言った藻裾に、デイダラの目が二倍か三倍かというくらい大きくなった。
「ああ!?何言ってんだ、オメエは!?オイラ今帰ったばっかりだぞ!?」
「おかえり。で、行って帰ろう」
「こんにちはさよならみてェに言ってんじゃねえ!あたしンちは終わったんだよ!観てたか!?和むよな、アレ!てかオメエ、失せりゃいいじゃんか。鬼鮫連れてよ、うん!?」