第14章 引き際の線引き
「アタシは腐れてなんかねえよ、オメエはカビちゃってパッフパフだけどな」
「だ、誰がパッフパフ!?・・・気持ちよさそうだな、うん!?」
「だろ?まあカビはカビだけどな。風呂くらい入れ。束子で背中流してやるぞ?」
「な・・・ッ、止めろ!きったねえ言いがかりつけんじゃねえ!痛い親切も止めろ!ホントビックリするくらいロクでもねえ事しか言わねえなッ、オメエってヤツは!」
「あー、はいはい、わかったわかった、悪かったよ。で?」
おもむろに腕組みして藻裾は辺りを見回した。
「でって何だ?うん?」
きょとんとしたデイダラに、眉をひそめる。
「牡蠣殻さんは何処よ?」
「へ?」
「へ、じゃねえでしょうが。草で牡蠣殻さんを見つけたんだろ?」
「ん?ああ、うん」
目を泳がせるとアジトの入り口に鬼鮫と飛段の姿があった。
飛段が頻りに何か言いながらこっちを指差すのに鬼鮫が呆れている様子だ。
「牡蠣殻さんが生きてたとあっちゃ、アニさんは黙っちゃないだろ?牡蠣殻さんの息の根はアニさんが予約済みらしいしさ」
デイダラの目線を追って飛段と鬼鮫を眺めながら、藻裾が続ける。
「て、事でだ。さあ、牡蠣殻さんをお出しなさい」
「いねえモンは出せねえよ。牡蠣殻ならついさっき草に戻った・・・・ンがッ!痛えなッ!何すんだテメエッ、うん!?」
「何すんだはこっちの台詞だ!バカッ」
デイダラの頭を殴り付けた鉛入りの靴を履き直しながら、藻裾は目を三角にした。
「戻ったじゃねえだろ!?何戻しちゃってんの!?何で帰しちゃうワケ!?キャッチアンドリリースか!?スポーツフィッシングか!?食わないモン釣ってんじゃねえぞ!?ブラックバスも残さず食え、残さず!釣ったら食うのが礼儀だぞ!揃いも揃って何やってンだ、バカツキは!!」
「バ、バカツキだと!?何だこのヤロウ、迷惑ばっかかけやがって、ロクでもねぇクソの里がよ!うん!?」
「クソじゃねえ、イソだ!」
「バカツキじゃねんだよ、アカツキだ!」