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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第14章 引き際の線引き


「また河童かよ・・・どんだけ河童なんだよ、ボクは」

「水月殿よ。軽口を叩いておる場合ではないえ。急いでたも」

伊草が口早に水月を急き立てた。飛段とデイダラに申し訳なさそうな、しかしどういう訳か血走った目を向けて、首を振る。

「放っておいてすまんなえ。どうにもこうにも手放しならぬ事態が出来しての。ちと室で大人しく待ちゃれや。あれ、あの干柿殿にもの、出歩かんように言うての」

飛段とデイダラは顔を見合わせた。

「あー、そうだったそうだった、急いでるんだったね、アンタ」

頭を掻いて水月は肩をすくめた。同意を求めるように重吾を見ながら、明らさまに面倒そうに言う。

「でもさ、僕らも知らないよ、カキガラが何処にいるかなんて」

飛段とデイダラの視線が交錯した。

「昨日消えたきりなんだから。最後に会ったのはアンタの方だろ?何処行くか聞かなかったの?」

水月の問いに伊草は頭を振る。

「表で寝ると出てしまって、その表がどの表か一向に見当がつかんえ。海士仁も知らんと言うし、杏可也は捕まらんし、あとの頼りは連れのお主さん方だけ・・・・」

言いかけて伊草がデイダラと飛段をフと見た。

「・・・ひょっとして、女子を見んかったかえ?顔に膏薬を貼った髷の女子え?」

「知らねえなあ」

耳を掻いて飛段が面倒そうに答える。

「ソイツが何かしたのか?」

伊草が何の気なしに吐いた杏可也の名前に反応した内心を隠し、デイダラも素っ気なく興味なさげな顔で問う。

「いや、いや、何にも」

額に汗して伊草が首を振った。

「足止めしてすまなんだ。したが室に戻って外には出ぬよう。よしかえ?」

「・・・あそ。じゃ、行くか、デイダラ」

「ん?ああ」

行きかけて振り向いたデイダラと、すれ違い様に顔を上げた重吾の目がかち合った。

「立ち去れ。為蛍と第二夫人が毒を盛られた。要らぬ騒ぎに巻き込まれる前に消えろ。お前らには前科がある」

重吾の低い声にデイダラは笑った。後宮での事か。

しかし、為蛍と第二夫人に毒が盛られた?それで周りが慌ただしいのか。

重吾は確かめるように小さくひとつ頷くと、伊草と水月を追って立ち去った。

「・・・メンドくせェやなぁ」

傍らで聞いていた飛段が薄く笑って腕組みした。

「毒を盛られたか。毒を扱う里のヤツでも毒にやられんだな」
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