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連れ立って歩く 其の三 鮫と虚貝編 ー干柿鬼鮫ー

第14章 引き際の線引き


「そらそうだろ、毒食って生きてる訳でもねえだろうしな。うん」

妙に関心している飛段に呆れながら、何の気なしに表を見たデイダラは息を呑んだ。

紗を被った女が薄絹をひらめかせて急いでいる。辺りを憚るように時折足を緩め、周りを見渡す、その嫋やかな立ち姿・・・

「・・・杏可也?」

窓枠に手をついて思わず洩らしたデイダラへ、持ち上げられた紗の下から覗いた白い顔が向けられた。

滑らかな頬、穏やかな半眼、艶やかな口元。

それがデイダラを見止めて笑った。


綺麗だ。やっぱり観音像みてえに、綺麗だ。


束の間デイダラと見合ってから、女はまた薄絹をひらめかせて先を急いだ。

デイダラはそれを呆然と見送る。

確かに杏可也だ。俺を見て笑った。覚えてるんだ。・・・ここで何をしてる?

「おい、コラ、行くぞ、デイダラ。何してンだ?」

「・・・・うん?ん、ああ・・・」

「まさか昼間から布団に潜ってイチャついちゃねえだろうけどよ、あー、デイダラ、オメエ先に部屋に入れよ?出会い頭に鮫肌食らうのなんざ俺ァごめんだかんな」

「うん?ああ・・・うん・・・」

「え?構わないの?・・・どうしちゃった、デイダラ?・・・あの、伊草が若い男といたのがそんなにショック?マジで?」

「・・うん・・・まあな、そうだな・・・うん」

「えぇえええェェ!!??ちょ、ヤだな、オメエ!!!そういうコト?そういうコトォ!!??ちょ、あんまこっち来んな。何か怖い。暁のメンバーが今初めて怖い。言っとくけど俺ァ全然そっち方面にゃ興味ねえからな!?わあ、ビックリした!」

「・・・そうかよ。行くぞ、ほら」

「行くよ、そら。今あなたと二人きりって凄く怖い。早く鬼鮫の鮫面が見てえ」

飛段の当惑した様子に、ぼんやりしていたデイダラが目の色を取り戻す。

「あん?鬼鮫の鮫面が見てえ?何言ってんだ、テメエは。気色悪ィ」

「気色悪ィのはこっちだっつの!このぺてん師め。今の今まで俺を騙しやがってよ!」

「・・・・・ホント何言ってんだ、大丈夫か、オメエ?訳わかんねえ事言ってっと置いてくぞ、うん?」

「・・・・・ちょっと離れて歩いていい?」

「何だ、うざってえな!好きにしろよ、うん?」

我の招いた誤解も知らず、冷たく飛段をあしらってデイダラは考え込んだ。






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