第3章 疑心暗鬼
「お前の事だ、後先考えず力業で押しきろうとしたんじゃろ?」
「・・・・いや、アタシにしちゃ辛抱がきいてたと思うんだがな・・・・まだ足りないのか。どんだけ辛抱すりゃいんだ、全く・・・・」
「で、その毒だか薬だかよく知れんヤツが大蛇丸とどう関わっとる?いや、・・・まあ聞くまでもないか・・・」
「牡蠣殻が最後に消えたとき一緒にいたのが大蛇丸だった。牡蠣殻は逃げ巧者だ。大蛇丸を連れて失せた」
「死にかけでか?」
「死にかけでだ」
「道連れにされちまったんじゃねえのか、アイツ?」
「牡蠣殻は巧者だが腕がたつ訳ではない。増して虫の息だったんだぞ。失せた先で何がどうなったか、考えれば考えるほどマズい。いっそ死んでいてくれればと思わずにいられん」
「そいつが何かやらかした訳じゃねえじゃろが。頂けねえの、綱手」
しかめ面の自来也に綱手は苦笑した。
「お前は昔からそうだ。兎角甘い」
「ふん?まあお前が何を心配してるかはわかった。大蛇丸を見かけたら報せるわ」
「頼む」
「牡蠣殻が一緒にいたらどうする。連れて来るか?」
「・・・そうだな・・・・」
綱手は組んだ手に額を載せて俯いた。
「そうしてくれると助かる。ここに連れて来てもまた苦労があるが、仕方あるまい」
「わかった。あまり根を詰めるなよ?眉間の皺がとれなくなるぞ」
「余計な世話だ」
綱手は溜め息をついて顔を上げた。
「ぼちぼち日没だ。今日はもう切り上げる。一杯どうだ?奢るぞ?」
「いいのう。お前と差し向かいは久方ぶりだ。たまにゃ年寄り同士も悪くないな」
「・・・アタシは年寄りじゃない」
「・・・エイジングにアンチするのも程ほどにしとかんと、マジ化け物になるぞ、お前」
「黙れ。何だ、いうに事欠いて化け物だと?いい度胸だな、自来也」
「年寄りだってお前は美人じゃぜ?いいじゃねえかよ、それで」
そう言って顔を覗き込んできた自来也に綱手は我知らず赤面して顔をしかめた。
「もういい。ホラ、行くよ」
「おう。どの店に行くんじゃ?わしゃ若いネエチャンの店がい・・・ブッ」
「黙んな。下らない事言ってると、次は頭がもげて吹っ飛ぶだけぶん殴るよ?」
「はだだだ・・・・何でそう手が早いんじゃ、お前は・・・」
「行くのか?行かないのか?」
「行かんでか」