第3章 疑心暗鬼
「別にィ?」
「・・・・そういう物言いは年若い者がやるからまだ許されるんだ。お前がやったら頭の緩いバカにしか見えんぞ」
「波破が戻ったようで嬉しいか、と、まあそんな感じの事が聞きたいらしいぞ、わしは」
「ハ。下らん。アタシはゾンビは嫌いだ」
「ええ!?波破の倅が?腐りかけの死体みたような男?・・・意外な・・・・。おいおい、大丈夫なのか、そんなんが影じゃ磯はもうにっちもさっちもどうにもローリング・ストーンになっちゃってるんじゃないのか?転がる石が転がるだけ転がっちゃって、なすすべもなく池ポチャガッデム!なのか?磯消えちゃう?あら~、波破かわいそ~。ワハハ」
「バカ、薄笑いしてんじゃない。死んだ波破が戻って来たらゾンビだろって話だ。波平がゾンビだなんて言ってないぞ。お前の頭の中はホンット夏物ばかり詰まった福袋みたようなものだな。全く伝説の三忍が聞いて呆れる」
「あとの二人も似たようなもんじゃねえかよ」
「・・・おい、お前らと一緒にするなよ。冗談じゃないぞ?」
「・・・そこまでヤな顔するこたなかろ?二目と見られんような凄い顔になっとるぞ、綱手」
「やかましい。口に気を付けろ、自来也。クリティカルに殴りつけられたいのか?」
綱手は手を振って自来也を追い立てると、ドスンと椅子に腰掛けた。
「荒れとるの。何だってそう躍起になる?もう放っておきゃよかろう。磯とも関わりを切った人間を木の葉の火影が追い回してどうする。第一生きてるか死んでるかもわからんのだろ?その牡蠣殻とか何とかいうヤツは?」
卓に行儀悪く腰掛けて手足を組んだ自来也に綱手は胡乱な目を向ける。
「死んでるとわかればいっそ安寧だ。大蛇丸と消えた挙げ句生きてられた方が始末に負えん」
「おいおい、物騒だな。一体何なんだ、その牡蠣殻とかいうヤツは?」
「あれは毒で薬だ。殊に身に飼った血毒は交わると止血が叶わない牡蠣殻の厄介な質を引き写す。薬としても得難い質があるが、これも牡蠣殻の血を用いた薬を併用せん事には、出血したが最後死に至らしむ毒でしかない。ひとたび交われば牡蠣殻なしには助からん」
「また面倒そうな事に首をつっこんどるの」
「面倒ですめば世話がない。誰といて何を考えているのか、それによっては大事にならないとも限らない。木の葉で囲い守る事も考えたが、完全に好機を逸した」