第11章 好機逸すべからず
カンクロウは口を扇ぎながら二人を睨みつけた。
「アンタら相手だとホント話しづらいじゃん。聞いた事もどんどん流されるし、まともな答えも滅多に返ってこねえし、何なんだ、一体。奈良が気を付けろっつってたのもわかるわ!」
「何だ?バンビのヤツ、そんな事言ってやがったのか?そら次に会ったらシメとかねえとな!で?何に気を付けようってんだ?」
「口も手も早ェと付き合いづらいんだよ!わかれよ!」
「どっちかにしろってか?じゃ選べよ。選んだ方に全力を注いだらァ。口と手どっちだ?足でもいいぞ。言っとくけどアタシん靴にゃ鉛が仕込んであっからな?キックにもパンチが利いてるぞ?ん?さァ選べ?」
「誰が選ぶかバカッ!答えが変わらねえ選択肢偉そうに突きつけんじゃねえ、ボケッ!どのみちこっちがボロボロじゃん!!」
「メンドくせェな、何だ、ツナカン。どうして欲しんだ、オメエはよ?」
藻裾に言われ波平に目顔で問われ、カンクロウは顎を引いて何かを呑み込んだ。呑み込んだが、次に口を開いた瞬間、それが全部まけ出た。
「俺はアンタらンとこの薄べったい女が何か可哀想でしょうがねんだよ。何とかしてやれよ。何であの人がボロボロになんなきゃねえの?何であんなんボロボロんなって、人違いの手ェ握って笑ってんだ!?なついてた人ォ知り合いに殺されて、よっかかりてえ大事な相手まで置いて逃げんなんて、何でだ?何かしたの、あの人?悪い事したの?何におい詰まってんの?何で誰か大丈夫だって言ってやんねえの?オメエは悪かねんだから大丈夫だって、何で言ってやんねえの?申し訳ながんねえで胸張ってろってさ、言ってやりゃいいじゃん!?」